コミッションss『私の鎮守府』(終)
🕑 Added 2023-10-27 11:09:58 +0000 UTC
依頼小説が仕上がりました。最終章は17500字強、全体で58600字オーバー。
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「はぁ、はぁっ、ぐっ……はっ……!」
廊下を必死に走る。
提督の責務とか、部下だった彼女たちの心配などと言っていられない。ただ本能的な恐怖が全身を支配している。
こうしたパニックは元凶から遠ざかれば落ち着くものだが、今はそうもいかなかった。
「おい、何で逃げてんだよ提督ッ!」
「逃げるナァ……トレーニングもケンカも台無しダロォ……!」
天霧と初月の怒鳴るような声が後ろから響いてくる。
乱闘中だったとはいえ、音を立てずにそっと逃げる……などという余裕は提督にはなく、おそらくすぐに気づいて追ってきたのだろう。
こちらの状態などまったく気にかけず、ただ本能的に逃げたから追っていると言わんばかりの追走。
バケツによって出来上がった巨体がどすどすと走るせいで廊下が軋み、必死に走る提督の足裏にも振動がわずかに伝わってくる。
このまま捕まってはまずい。頭では警報がひっきりなしに鳴っているのだが……
「あっ、っ……かはっ……!」
つい先日まで静養していた彼女にとって、全力疾走など無理というものだった。
そもそも足が遅いうえ、体力もないために失速していく。呼吸も乱れ、足がもつれかける。
対してすさまじい巨体となった初月たちだが、スピードの乗ったその身体がそうそう止まるはずもない。
筋肉が生み出すパワーは尽きることなく両脚に供給され続け、2人の足音と廊下の振動がどんどん大きくなってくる。
(ダメだ、このままじゃ捕まる……!)
もし追いつかれたらどうなってしまうのか、想像もつかない。
少なくとも正気を失った彼女たちに、力加減ができる気がしないのは確かだ。
胴体よりも太いだろう腕で軽く押さえつけられただけでも、提督の肉や骨が無事かどうか分かったものではない。
恐怖でゾクリと背筋が震える。
(どこか、逃げ場は……)
体格差を活かして小回りを利かせて逃げたいところだが、あいにく廊下は真っ直ぐだ。
周囲を見渡して目に入ってきたのはドアと、場所を示す小さな看板。
『執務室』……自分が鎮守府で一番長く時間を過ごした場所であり、本来いるべき場所。
(ここだ!)
成算があるわけではない。ただ自分が一番よく知っている空間であり、このまま廊下を走って捕まるよりはずっといい。
彼女は部屋のドアを開け、走ってる勢いそのままに転がり込んだ。
「いてて……」
べちゃりと執務室のカーペットに倒れ込み、手をついてゆっくりと起き上がる。
自分が一番使っていた部屋だ、レイアウトが変わっていなければ間取りはよく知っている。
隠れられる場所がどこか、必死に頭を働かせていると……
「あら?……提督ですか」
唐突に声がかけられ、ビクリと身体を震わせながら振り向く提督。
窓際に立っていたのは、白を基調にしたオーソドックスなセーラー服に、ストレートで長い黒髪の女性だった。
眼鏡を掛けつつ、落ち着いたトーンの声音。
軽巡大淀。
艦娘として戦闘に出たのはしばらく経ってからだが、この鎮守府には初期からいる艦だ。
細身の優等生然とした立ち姿で、いつも執務の補助をしてくれていた彼女はこの部屋にいてもおかしくない存在だということを思い出す。
(大きい……)
そして初期からお世話になっている艦ゆえに、その筋肉はやはり尋常でないレベルで肥大していた。
服をギチギチに押し上げ、布ごしにも一つ一つの筋肉がの形が見えるほど。
やはり人間離れした筋肉量ではあったが、さきほどの天龍や神通をみた直後では感覚が麻痺して小さく思えてくる。
くわえて、自分の知っている大淀の雰囲気はしっかりと感じられた。
バケツや母乳でこのレベルの肉体に変わった艦娘たちは理性を失っていたが、彼女は前からずっとこの巨体なのだろう。
圧倒はされるがただ立っているだけであり、迫ってくる者たちよりはずっといい。
少なくとも、彼女が襲ってくることはないだろう。
数年ぶりの再会……しかも突然ドアから転がり込んできたのだから、あまりにも唐突すぎたのだろう。少し驚いたような表情を浮かべてこちらを見つめていた大淀だったが、提督と目が合ってすぐに眉をひそめた。
「それで……何をしてるんですか?」
床の上でへたり込んでいる彼女へ、呆れたような表情を浮かべる大淀。
筋肉のことなど意に介してないのは他の艦娘たちと同じなようで、明石や間宮に匹敵するその筋肉を揺らしながら近づいてくる。
どうやら、提督がパニックになっていることに気づいていないようだ。
「この鎮守府のトップなんですから、もっと威厳のある振る舞いをですね──」
「あの、今は時間がなくて……」
大淀の説教を遮って、必死に訴える提督。
急がないと、天霧たちが後ろから自分を追ってきている。
とにかく状況を説明して、匿ってもらおうとしたのだが──
ボガァッ!
提督が話し終える前に轟音が響く。
さきほどまでドアのあった場所に大穴が空き、そこから天霧と初月が姿を現した。
「何ちょこまか逃げてんだァ?」
「逃がさナイ……テイトクゥ……!」
ブチ切れたテンションのままの天霧と、理性をほぼ失っている初月が現れた。
鬼気迫る表情とパンプアップしてビクビクと震えている筋肉。
肉食獣を前にしているような恐怖が一気に押し寄せて、全身がこわばり背筋に寒気が走る。
「ひぃっ!?」
「……そういうことでしたか」
状況を理解したのか、冷静な印象の大淀も流石に眉がピクリと動く。
ジロリと睨むような目つきで2人に視線を送るのと、ここが何の部屋か天霧と初月が理解するのはほぼ同時だった。
「え、執務室?……やっべ!」
「ア……本当だ」
流石に場所が悪いことを察した2人。
ここは本来は提督を含めた上官がいる場所であり、れっきとした海軍としての上下関係で構成された空間である。
ヒートアップしていた肉体も、思考も、半ば強引に冷静さを取り戻させられる。
「も、申し訳ありません!」
「提督を追いかけて、つい勢いのまま……!」
頭を下げる2人。
最初は大淀をみて謝っているのかと思ったが、微妙に方向が違う。
壁際に立っている彼女ではなく、どちらかといえば部屋の中央あたり、提督がいつも使っていた机の方へと向けられていて—―
「……あ」
本来は空席だったはずの場所に、こちらに背を向けて座っている人がいることに気づいた。
……ただ、黙って座っているだけ。それなのに、圧倒的な威圧感を放っている。
椅子の背もたれが全く意味を感じないほどに広く巨大な背中。
そこからアーチ状に盛り上がり、首や後頭部との境目が分からないほどにせり出している像帽筋。
両肩はこれでもかと左右に張り出し、上半身のボリュームを象徴している。
二の腕は半開きでなお背中と干渉し合い、巨体でありながらも上背よりもバルクによる横幅の方が際立っている。
机に遮られて上半身しか見えていないが、下半身もこれに匹敵するボリュームであろうことは容易に想像がついた。
(大きい……)
今まで見てきた艦娘たちどの筋肉よりも大きく、圧倒的で、荘厳だった。
筋肉の神がいたら、こんな姿をしているだろうか。
背中を流れる白い髪は、滝のようにまっすぐ落ちていくロングストレート。それは執務中もずっと隣にいて、眺めていた長髪。
くわえて頭上でフワフワと動いている艤装は、何度も目にしていたものだった。
「あんたたち」
背中の主から発せられた声が執務室に響く。
聞き慣れたはずの声。
しかし山が鳴っているような、身体の芯に響く振動をともなっている。
「「は、はいっ!」」
その声に、ビクリと身体を震わせる天霧と初月。
提督に最初に挨拶したとき以上に恐縮しているその様子は、肉体的にも精神的にも圧倒的かつ不可逆な上下関係なのが伝わってくる。
「提督が戻ってくるまで、ここを変わらない状態で保つ……何が何でも」
静かに、しかし強い意志のこもった声音。
「そう決めて、皆でやってきたわよね?」
くるりと椅子を反転させ、こちらを向く声の主。
提督もよく知っている、想像通りの顔。
秘書艦、叢雲。
この鎮守府に着任した際、最初に選んだ艦娘であり、静かな怒りに満ちていた。
「その約束を忘れて何やってんの!あぁ!?」
「「申し訳ありません!」」
ドスの効いた声が2人に向けられる。
土下座する勢いで謝り倒す天霧と初月。
理性を失って提督を追いかけ回し、執務室を破壊する……弁明のしようがない行為なのもあっただろう。
あれだけ肥大化した筋肉が縮こまって見えてくる。
「提督の方が先に着いたから、ギリギリそれは許すとしても……」
提督が逃げ込んだのがちょうど執務室だったがゆえに、厳密には2人が約束を破らずに済んだといえる。
ただ気を緩めさせないためか、言葉を遮るように軽く机を叩く。
それだけで鈍い振動が部屋に響き渡った。
「そもそも、案内人が怯えさせてどうすんのよ!」
「「申し訳ありません!」」
ふたたび平謝りする2人。
「謝る先も違うでしょうが!」
「「は、はいっ!本当に申し訳ありませんでした!!!」」
叢雲の言葉に、提督に向かって同じ姿勢で謝り倒してくる。
困惑するしかないが、恐怖を感じていたのも事実なのでどう反応すればいいか迷ってしまう。
ただ、先ほどまでの危機的な状況からは脱したのだと理性ではどこか安堵していた。
「ほんっと、バカなんだから……」
呟きつつ、椅子から立ち上がって提督のもとへと近づいてくる。
やはり今までで一番の長身で、彼女の顔を呆然と見上げる提督。
今まで見てきた誰よりも圧倒的な肉体ではあるが、筋肉に呑まれた艦娘たちとは異なり、すべてを制御しているような印象があった。
「よく帰ってきたわね。おかえりなさい」
ぶっきらぼうな言葉ではあるが、それが彼女の精一杯の歓迎だということは長い付き合いでわかる。
姿が変わっても、その口調や表情はいつもの叢雲だ。
厳しい態度が目立つ彼女だが、少し言葉を選ぶように迷った素振りをしてから、ふっと表情を緩めて提督を見つめる。
「なんとか、守ったわよ」
「……!」
この鎮守府を去るときの記憶が蘇る。普段のように口では強がっていた叢雲に一瞬だけ浮かんだ、あまりにも寂しそうな表情。
みんなの無事を願って命令を残したが、それを守り切るのは容易なことではなかったはずだ。
深海棲艦を相手に、1人も犠牲にしない……提督がいてもなお困難なことを数年間やってのけ、鎮守府をより強くしてきたのだ。
少なくとも海軍の中にだってイレギュラーを快く思わない存在はいたはずだ。
提督の座を奪ってここの戦力を欲しがる者だっていておかしくはないし、自分が戻ってくるまでこの席を空け続けてきたのは容易なことではない。
困惑の連続で半ば忘れかけていたが、本当にこの場所を守るために全力だったのだろう。
「……ありがとう」
心からの感謝を伝えながら、胸まわりに顔を半分うずめるようにして叢雲を抱きしめる。
その腹部は両腕を広げても半分も回しきれず、ただ身体を押し当てているような恰好になっていたが、叢雲もそっと抱き返し、提督の薄い背中の感触を確かめるようにさすっていた。
分厚すぎる筋肉と、しっとりと汗ばんだ服は今までにない抱き心地ではあるものの……その不器用な優しさは、紛れもなく最愛の秘書艦のものだ。
ようやく、自分は元の居場所に帰ってきたんだと実感する。
……ただ、それだけでは終わらなかった。
「あんた相変わらず細いわねぇ。もっと逞しくなりなさいよ」
「……え?」
まるで執務中の世間話かのように、さらりと語られる。
身体を離して見上げると、こちらを見下ろしている叢雲と目が合った。
まっすぐでいつもと変わらない表情。
ここに来るまでにも何度か経験してきた、価値観の根底からすべて筋肉に染まった者の、善意から出たであろう言葉。
「私くらい逞しかったら何も問題ないでしょ」
「え、いや、その……」
何を言ってるのか、言葉は認識できるのに意味を理解できない。
ただそれが、筋肉中心の価値感では当然のことなのだという異様さだけが伝わってくる。
「提督が最も古参ですから、私たち以上に逞しくあるべきです」
さらに、横にいた大淀も一緒になって迫ってくる。
「一番デカいのがリーダー、ってのはあたしらも嬉しいし」
「その方が皆も従いやすいしね」
天霧と初月も近づいてきた。
この場にいる全員が……提督が一番の筋肉の持ち主であることを望んでいる。
あまりにも異常だと思ったが、それを理解してくれる者がいない。
そもそも、この鎮守府にいる提督以外の全員が筋肉の虜なのだ。
「ちょっと、みんな近いよ……」
ドアのあった大穴の方向には天霧と初月が、横から大淀が、そして正面に立つ叢雲が、提督の行き先を塞ぐように立ちはだかる。
自分よりも頭2つ以上はある筋肉の壁に囲まれる。
「また静養されたら困るのよ」
がっしりと腕を掴んでくる叢雲。
話がどんどんおかしな方向へ向かっていく。
しかも、誰も止める気がない。
「だったら、私が鍛えてあげた方がいいじゃない……ふんっ!」
ビリィッ!
濡れた薄紙を破るかのように自らの服を筋肉の収縮で破り捨て、水着一枚になる叢雲。
おそらく筋肉による熱なのだろう、すでに汗が滲み出ており立っているだけで熱気と湿度が押し寄せてくる。
ギュムッ
そのまま腕を回し、身体を密着させてきた。
加減はしているのだろう、先ほどよりは強いが痛みはない程度の圧力で、叢雲の筋肉が押し付けられる。
汗ばんだ肌から提督の軍服にも汗が染みて、ぬちぬちと擦り込まれていく。
「ちょ、ちょっと、やめてっ……!」
提督も抵抗しようとはしたものの、巨大な壁を押しているかのようで微動だにしない。
そして、熱い。
目の前の肉体によって温度も湿度も高いのはもちろんだが、それにくわえて身体の内側から熱が湧き上がってくるような……。
ムクッ
「……えっ?」
もがく中で目に入ってきた、自分の腕。
入院や静養の間ずっと見てきた、骨と皮と最低限の肉しかついてなかった細腕に、わずかだが太さを増した。
「あ、間宮の食堂で飲んだ特製ドリンク、あれ母乳も入れてあるからな」
思い出したように告げる天霧。
朝霜と高雄が食べていた間宮アイスや、間宮が搾乳していた母乳の記憶が蘇る。
アイスの原料となっていた間宮の母乳には、筋肉化の作用があると説明していたはず。
つまり……
(私の筋肉が膨れ上がってる!?)
理解して、衝撃に思考がフリーズしかける。
身体の内側からこみ上げてくる熱と、わずかずつ太さを増していく自分の腕。
提督はもちろん艦娘ではない。しかし、それが効かないという理由にはならない。
おそらくは叢雲の汗や筋肉を押し付けられたのをきっかけに、今まさに作用しつつあるようだ。
危機感が高まっていくが、筋肉が密着して拘束されているこの状態では何もできない。
「ただ筋肉が大きいだけでは足りません。あくまで、一番の存在になって頂かないと」
そして大淀が取り出したのは、鮮やかなオレンジ色のバケツだった。
工廠で見かけたあのアイテム。
この鎮守府の変貌ぶりの元凶となった、新型の高速修復材。
「それって……」
「明石から預かっていました。提督に使うために」
淡々としていた大淀の口調だが、次第に熱がこもりだす。
「これだけの量、私だって使いたくてたまりませんでしたが……復帰される提督のためです、我慢したかいがありました」
うっとりとした表情でバケツを見つめながら語る大淀。
これを自分に使うつもりなのだと察して背筋に寒気が走る。
「い、いや、私に使って何が起きるか……」
艦娘が使うためのアイテムを人間に使用する、それ自体が何が起きるか予測不能すぎるし、そもそもバケツの効果が恐ろしすぎる。
とにかく止めさせなければ。必死に説得しようとする提督だったが、唐突に後ろからどたどたと大きな足音が響いてきた。
「なんで大穴開いてるん?」
「入りやすいからいいけどよ」
ぞろぞろと入ってきたのは、見知った顔と肥大化した筋肉の数々。
ここまでで会ってきた艦娘たちだ。
「admiral……」
スキャンプはまだ着任して日が浅いためか、執務室という環境に緊張気味だ。
工廠でこのバケツを頭からかぶり、巨体へと変貌したが、周囲の面々と比べるとそれでも小さい方なのだから驚きだ。
「提督がデカくなるんなら、あたいらも気が楽だねぇ」
巨大な乳房を揺らし、母乳を滴らせながら入ってきた朝霜。
まだ母乳が分泌され続けているようで、ビキニからあふれた乳白色の河が下乳から滴り甘い匂いがうっすらと鼻をつく。
「久しぶりに、ここに自分がいるんを見たわ……本当に戻ってきたんなやなぁ」
ちょっと懐かしそうな様子の龍驤。
ボディビル大会でのパンプアップは収まっていないようで、褐色肌に汗を滴らせながらビクビクと大胸筋を震わせている。
「デカい音がしたと思ったら……なんか面白そうなタイミングじぇねぇか」
天龍は何が起きるのか理解しつつも、楽しそうにこちらを見つめていた。
無論、誰一人として止める者はいない。
むしろそのバケツに視線が注がれ、促すように大淀を見つめていた。
大淀はそれに応えるようにバケツを持ち上げ、提督よりも高い位置に掲げる。
そして別方向に力を込めたのだろう、前腕にビキリと筋が浮き上がり──
ザバァッ!
提督の頭上でバケツをひっくり返し、中身を直接ぶっかけられた。
「うわっ……ぷはっ」
全身がびしょ濡れになり、顔を拭って息継ぎのように呼吸する。
反射的に全身で動こうとしたものの、筋肉に囲まれ肉圧で固定され、それ以上のことは何もできなかった。
「ほら、あんたたちも加わりなさい」
「ん、いいのか?じゃあ……」
さらに、叢雲に促されて部屋にやってきた艦娘たちも加わってきた。
そのほとんどが水着で、裸同然に全身の筋肉を晒している。
その肉体が、提督めがけて押し寄せてくる。
ギュムッ、ギチチッ、グニッ
艦娘たちのおしくらまんじゅうによって、全身くまなく塗りつけられていく。
体格差もあって提督の顔は彼女たちの胸まわりの高さにあり、大胸筋と乳房がたわんで窒息しそうになる。
(筋肉に溺れる……!)
首から下を誰のか分からない腕や腹筋、太腿にもみくちゃにされ、ヌチュヌチュとバケツと汗の混合液を全身に塗りつけられる。
うっすら白く濁っているあたり、母乳も擦りつけられているのだろう。
「本当に素晴らしいですね。明石はいいものを作ってくれました」
珍しいくらいに満足そうな声音で呟く大淀。
バケツを至近距離で浴びたからだろう、ただでさえデカかった肉体が、天龍並みのサイズにパンプアップしていく。
「あたいにもバケツの効果出ねぇかな~」
「オレは提督がどこまでデカくなるかの方が気になるけどな」
ギュムッ、グニッ、ヌチュッ……
それぞれの肉体美を主張するように、全身に筋肉を押しつけてくる艦娘たち。
肉体に埋もれて、呼吸するのがやっとな提督。
(まずい……というか、苦しいっ……!)
提督は半ばパニックになりながら危機感を募らせていた。
筋肉に揉みくちゃにされて、自分の身体が壊れてしまうのではという不安が一つ。
筋肉化が作用して、艦娘たちのように肉体も精神も変わり果ててしまう恐怖がもう一つ。
そして──
(熱い……!)
筋肉の熱が伝わっているのはもちろんだが、それ以上に膨大な熱量が身体の芯から湧き上がってくる。
何かが起きているような、熱とともに異変がさらに膨れ上がっていくような予感はしたが、自分の肉体がどうなっているのか、筋肉に揉みくちゃにされて確認することもままならない。
これ以上はやばい。そんな危機感が背筋を這い上がり、頭が恐怖で満たされようとして──
「……ねえ」
叢雲に両脇から抱え上げられるようにして、筋肉の海から引き上げられる。
周囲の圧力が一気に落ち着き、目の前には両腕でがっしりと自分を抱え上げている叢雲がいた。
ただただ真剣なまなざしに、こちらも無言で見つめ返す。
「これからは、ずっと一緒にいられるわよね?」
わずかに震えた声で、不安そうにこちらを見つめている、私の秘書艦。
……ああ。
言葉にできない納得感が胸中を満たしていく。
私は彼女を置いて、何年間も待たせてしまったのだ。
この場所を守るために全力を尽くして、また私を失ってしまうのが怖いのだ。
それだけ負担をかけたし、心配をさせてしまった。
(……だったら)
私も、彼女たちに尽くそう。
この鎮守府の長として、二度と離れることがないように。
ずっと頭の奥底で拒否し、抗っていたものが、ふっと緩む。
ボゴンッ!
叢雲の腕の中で、内側から爆ぜるように一気に肥大化した。
そのままの勢いで急激に膨れ上がっていく私の筋肉。
バキッ、ギュムッ……ボゴゴッ!
疼き、興奮、すべてが筋肉で上書きされていく。
艦娘たちに囲まれて押し潰されそうだったのに、それもいつの間にか消えていた。
立っているだけなのに、逆に押し返しているのがわかる。
そして見上げていたはずの叢雲の顔が、だんだん近づいてくる。
(自分が、大きくなってる?)
一気に解放感のような感覚が全身に広がっていく。
気がつくと擦りつけられていた周りの肉体がいつの間にか離れて、叢雲だけが正面に立っている。
周囲を見回すと跳ね返されたように床に崩れ落ち、驚きにも似た表情で唖然と見上げている艦娘たちがいた。
(……重い)
ずっしりとした全身の手応え。
立っているだけでも、何かずっと重さが両脚にかかってくるようだ。
しかし重くて動けないわけではなく、むしろしっかりと全身を支えて動かすためについた筋肉たちが、本領を発揮する瞬間を今か今かと待ちわびて疼いている。
(なんか……呼吸が楽だ)
今まで感じていた身体の重苦しさがない。
毎日を過ごすのがやっとだった肉体が、一気に楽になっている。
見下ろすと今まで何もなかったはずの視界の下半分を占拠するように、大胸筋がせり出していた。
着ていたはずの軍服はどこにも見当たらず、床にその名残だった白い布切れが散らばっている。
いつの間にか、提督として着ていた服は破れ散っていたらしい。
(全裸……だよね、ビキニを着てたわけじゃないし)
自分の裸を眺めながら、頭のどこかでひどく冷静に事態を捉えていた。
色白だったはずの肌も艶やかな褐色に染まっているけれど、この筋肉を際立たせてくれるのだと思うと素敵なものでしかない。
胸や股間が丸出しであることなんか、すでにどうでもよかった。
「すごい……」
圧倒的な筋肉によってエネルギーに満ち、充実した感覚。
さっきまで何を恐れていたのか、今では分からない。
出来上がったばかりの肉体が、筋肉が、溜まりに溜まった熱量を発散したいと訴えている。
ボディビル大会でのポージングを思い出す。
身体中の筋肉の欲求に応えるため、取るポージングは自然と決まっていた。
「うおおおおぉぉぉぉっ!!!」
ボコボコボゴォォォッ!!!
モストマスキュラ―とともに、筋肉が盛り上がり全身がさらに厚みを増す。
ずっと全身を包んでいた慢性的な苦しさが嘘のように、収縮した筋肉から熱と歓喜が伝わってくる。
病弱だったはずの肉体が、逞しく強靭な筋肉に上書きされていた。
(何であんなに嫌がっていたんだろう)
この鎮守府に戻ってきてからずっと、困惑しては勝手に落ち込んで、怯えたりパニクったりしていた。
こんなにも素晴らしい筋肉を嫌がって、弱弱しい身体に拘っていたなんて……
「……バカみたいだな」
今までなら使わなかっただろう、乱暴な口調で呟く。
ずっと理性的だった提督だが、湧き上がる衝動のままに自然と口調まで他の艦娘たちのような荒々しいものへと変化していた。
そして意識は自分から周囲の艦娘たちへと向けられる。
おしくらまんじゅうを跳ね返されて床に崩れ落ち、叢雲を超えた想像以上の肉体美を呆然としたまま見つめている筋肉の虜たち。
「おう、天霧、初月」
「「はいっ!」」
提督に声を掛けられた瞬間、跳ねるように立ち上がり海軍らしくビシリと背筋を伸ばして応じる2人。
これまでの態度とは打って変わって、完全に忠実な部下としての顔でこちらを見つめている。
一目で上位だとわかる肉体を前にして、先ほどまでの無礼ともいえる振る舞いを悔いているようだ。
先ほども謝り倒してたから提督はもう気にしてないが、それとは別の目的があった。
「案内の礼にいいものやるよ」
「んっ!?」
「むぐっ!」
彼女はおもむろに腕を伸ばし、2人を同時に抱き寄せる。
両者ともバケツの中身を注射したことによって分厚い肉体となっていたが、体格差が完全に逆転した今の彼女には造作もない行為だ。
大胸筋に顔面が埋もれ、もがくように腕と背中の筋肉を蠢かせる駆逐艦たち。
すぐに解放されたが、提督の肌に滲んだ大量の汗が彼女たちにべったりとまとわりつく。
変化はすぐに現れた。
「あぁっ……」
「ぐっ、んぎっ!?」
ググッ……ミシッ、ビキキッ!
2人の筋肉が一気に膨れ上がる。
巨体だったはずの骨格がさらにゴツく、筋肉一つ一つが肥大化しすぎて関節を埋め尽くしてしまいそうなほどに。
それこそ、バケツを注射したとき以上の変貌ぶりだ。
1分もしないうちに、天龍すらも凌ぐレベルの筋肉を身にまとった2人が彼女の前に立っていた。
「やっぱ私の汗も効くみてぇだな」
満足そうに呟く提督。
体液が筋肉化の作用を持つ……そうであるのなら、筋肉の権化となった提督の汗も同じなのではないか。
その予感は正しかったし、むしろバケツ以上にすさまじい筋肥大を引き起こすのだと理解する。
「すげぇ……」
「こんなことが……!」
変貌した自らの肉体を見下ろして、歓喜に打ち震える天霧と初月。
あきらかに、この場にいる艦娘の中で最も……それこそ叢雲すらも追い抜くレベルに肥大化した筋肉。
提督にこそ届かないが、それがある種の限界突破であることは誰の目にも明らかだった。
「うそ……」
「もっとデカくなれる……?」
これをみて顔色が変わったのは、他の艦娘たちだ。
呆然と見つめていたままだったのが、提督と2人をみて目の色が変わる。
筋肉を揺らして立ち上がり、彼女たちのもとへ近づいていく。
「もっと筋肉を」
「う、ウチももっとデカい胸に……」
失礼のないように意識しつつも提督の前へと身を乗り出し、口々に迫ってくる艦娘たち。
筋肉への羨望と、さらにデカくなりたいという本能的な欲求による行動。
提督はそれを眺めつつ、手を前に出して皆を制する。
「そう媚びなくても、そのうち鎮守府全員抱いてムキムキにしてやるよ」
ニヤリと笑みを浮かべながら告げる提督。
直前までおざなりに扱われてきた彼女だが、この肉体になって態度が一変したのだ。
ねだるように迫ってくる艦娘たちを眺めているだけで、愉悦に近いものがこみ上げてくる。
(……まぁ、この筋肉だから当然か)
もちろん、本人も筋肉の虜になっているがゆえに、態度の変化にも納得しているのだが。
「順に抱いてやるから大人しく待ってろ」
命令が下された途端、びしっと姿勢を正して待つ艦娘たち。
横一列に並んだ、執務室の一辺を覆い隠しそうな筋肉の壁を見渡して、満足そうに笑みを浮かべて品定めをする提督。
案内で会った2人を変えたのだから、次は……
「スキャンプ!」
「!」
提督に名前を呼ばれ、ビクリと背筋が伸びる。
明石の修復材でかなりデカくなった彼女だが、この部屋の中では最も小さく筋肉も貧弱だ。
……それでもバケツの威力とその変貌ぶりを初めて目にして、パニックになった相手でもあるが。
「工廠では怯えたりしてすまなかったな」
「い、いえ、あれはあたいが悪かったから……」
提督を前にして恐縮しきりのスキャンプ。
彼女は落ち着いてすぐに謝っていたし、とくに悪くは思っていない。
「まだ新人なんだろ?もっとデカくなれよ」
ニカッと笑みを向ける提督。
予想外だったのか、少し目を見開くスキャンプ。
ただ、彼女が何かを口にする前に、すぐに抱き寄せられた。
「んむっ……ぐっ……」
その巨体と筋肉で、スキャンプの全身を筋肉で包み込む。
乳房に上半身が埋もれ、太腿で胴体が絡め取られる。
反射的に動こうとしているのかスキャンプの背中や二の腕がビクビクと収縮しているが、まったく微動だにしない。
汗がじっとりと全身に擦りつけられ、そのまますぐに筋肥大が起きる。
ムグッ、ギュムッ……ボゴォッ!
腕の中でデカくなっていく身体。
潜水艦の特徴であるスク水を限界まで引き伸ばしながら、ギリギリ抱きしめられる程度の体格まで成長する。
「これが……」
「顔もいいが……この肉体が合わさって最高に美しいじゃねぇか」
膨れ上がった肉体を素直に褒める提督。
美形と呼んで差し支えないだろう顔立ちに、巨大でかつパーフェクトな肉体美。
天霧たちよりは小柄だが、着任した期間の短さを踏まえればまだまだデカくなれるだろう。
まだ理解が追いついていないのか、自分の肉体を見下ろして固まっていたスキャンプだったが、徐々にその表情が興奮に蕩けていく。
「あぁ……beautiful」
自らの認識とともに悦びがこみ上げてきたようで、うっとりと自分の身体を撫で回しながら恍惚とするスキャンプ。
汗ばんだ肉体が水着をじっとりと湿らせ、バランスの取れた筋肉を艶やかに彩っている。
その姿を見つめているだけでも、これからへの期待に胸が膨らんでいく。
「これからもっとデカくなれよ」
提督は新人へ激励の言葉を送り、次の相手へと目を向けた。
「朝霜」
駆逐艦の名前を呼ぶ。
間宮食堂で会ったときは少女らしくあった彼女だが、もう大人の女性と呼ぶべき体型をしていた。
筋肉にくわえて脂肪が乗り、乳房も大きいのがその印象に拍車をかけているのだろう。
そして、その顔は今まで以上に妖艶だった。
「はやくあたいにもシてくれよ……もう我慢できねぇよぉ……!」
他の駆逐艦や同じくらいの体格である潜水艦が変わっていく様子を見たからだろう、待ちきれないとばかりに両腕で乳房をたわませ、尻を振りながら誘惑するようにねだってくる。
股間からは、おそらく汗とは違うだろう透明な液体が溢れて内腿を垂れていた。
「ただの威勢のいいガキンチョが、立派なデカパイメスビッチになりやがって❤」
もう、彼女たちの変わりように動揺する提督ではない。
むしろその肉体や言動を愉しみながら、朝霜の肢体を堪能するために手を伸ばす。
ギュムッ
「駄肉もついてんじゃねぇか」
「あんっ❤」
乳房を掴みながら、彼女を抱きすくめる提督。
密着した肌から汗が伝い、朝霜にも効果が表れる。
ドブルンッ!
まず、両手を押し返すように胸がサイズアップした。
バランスボールもかくやというサイズの乳房に、手首くらいはあるぶっとい乳首。
尻にもさらに脂肪がつき、全身がバルクと脂肪でよりデカく分厚くなる。
「エロボディがお好みか?いい趣味してんなぁ」
豊満かつ逞しい肉体を褒めつつ、かがみながらその胸へと顔を近づける提督。
朝霜の筋肉爆乳、その頂点にそそり立つ極太乳首に吸いついて、すぐに壊れた蛇口のように噴き出してくる母乳を飲んでいく。
「んっ……濃厚になって美味いぞ」
戦艦よりも豊満となった駆逐艦は、母乳も極上となっていた。生クリームのように甘くとろみのあるミルクの旨みとプロテインを味わってから、手の甲で唇を拭う。
その後も乳房と筋肉のマリアージュをひとしきり堪能してから、腕を離す提督。
しかし朝霜は、それに気づかないほどに夢中で自分の胸を見つめ、揉んでいた。
「後で夕雲型の奴らにも飲ませてやらねぇと……❤」
彼女は誰がどう見ても、己の肉体と乳快楽の虜となっていた。
提督は次の相手へと近づき、ニヤリと笑みを浮かべながら声をかける。
「龍驤……お前、私に貧弱になったとか言ってたなぁ」
「い、意外と根に持つタイプなんやね自分……」
苦笑いを浮かべながら、降参だとばかりに両手を上げる龍驤。
お互いに軽口を叩き合ってきた間柄のため、提督も彼女に対しては軽くふざけつつ絡んでいるようだ。
「まぁな、こっちも好きで弱っちい身体になったわけじゃねぇしな」
「それは……悪かったわ」
うつむいて謝る龍驤。
この肉体を前にして冷静になっているが故に、自分の言動を省みれているのだろう。
とはいえ提督とて彼女を責め立てたいわけではない。筋肉化によって肉体についての感覚が変わったのもあるのだろう。龍驤よりもずっと乱暴な言い方をしてきた艦娘たちも多かった。
もう気にしてないし、わざわざ空気をしんみりさせたいわけではない。
「まあいい、お前の場合はいつも胸を比べてたよな」
ポンと肩に手を置きながら、こちらを見上げてくる龍驤に尋ねる。
「他の奴らよりもデカい爆乳にもしてやれるが……どうする?」
つまり、間宮や朝霜よりも巨大な乳房にしてやれるということだ。
突然の選択に驚きの表情を浮かべた龍驤だったが、数秒ほどして何かを悟ったかのようにふっと笑みを浮かべる。
「デカい乳はエロくて素敵やけど……ウチ自身がなりたいとはもう思わん」
提督が着任していた頃には、思わなかっただろうこと。
筋肉によってデカくなった悦びを経験し、バルクとバスキュラリティを追い求めるあまり、いつしか自分の求めているものは変わっていたようだ。
龍驤は自分の胸を……これでもかとたわわに実った大胸筋を支え上げるように見せつけながら続けた。
「もっと筋肉でバキバキの、究極のボディを極めたい。この胸のまま、筋肉をデカくしてくれへんか?」
「……望みどおりにしてやるよ♪」
本心から願われたからには、応えないわけにはいかないだろう。
提督は自らの爆乳を押し付け、汗を擦り込んでいく。
すでにバルクも絞り込みも相当な龍驤だが、限界とも思えるようなプロポーションに変化が生じていく。
ギュムッ、ボゴッ、ギチチッ……!
提督の肉体を押し返すように、彼女の前面が盛り上がる。
そのすべてが筋肉であり、絞り込まれた体型のまま皮膚のすぐ下で筋繊維が増大していく。
そしてやはりというべきか、胸のサイズアップが著しい。大胸筋がさらに盛り上がり、パツパツに張り詰めていく。
筋肉という性質からして中央には胸板の溝があるはずだが、肥大して張り出した大胸筋が干渉し合い、谷間が出来上がるほどの肥大ぶりに。
「こんな感じでどうだ?」
「……これ、ウチの身体……本当に?」
提督が腕を離したときには、龍驤の肉体は筋肉の塊と化していた。
身長はそこまで伸びていないが、その分だけ横幅や胸板の厚みの増大ぶりはこの場にいる誰よりもすさまじい。
足元が見えない……巨乳でよく使われるその状況が、大胸筋のみで生み出されていた。
「今までいろいろ言い合ってきたけどよ、これでおあいこにしようぜ」
「この筋肉、この胸……最高すぎるわ」
感動に打ち震えながら大胸筋に触る龍驤。
「これからもっとデカく……うひひっ」
興奮と筋肉への賛美、そして性欲が煮詰められたような好色とも取れる笑みを浮かべ、筋肉爆乳を揉みながら悦に浸る龍驤。
おあいことは言ったものの、大胸筋の比べ合いは今後もしようかなどと考える提督だった。
「さーて、お前の番だな」
ぶっとい腕を組みながら天龍の前に立つ。
トレーニング室では一番の巨体を誇りつつ神通を諫めていた彼女だが、今はその顔に緊張が走っておりまったく余裕はない。
自分より小さかったはずの艦娘たちが、次々にデカくなったのだ。この部屋の中では、すでに自分が一番小さいレベルにまでなっている。
その顔はこわばり、目に見えて分かるほどに冷や汗をかいていた。
「トレーニング室では、数々の不遜な言動、失礼しました……」
慣れない敬語口調で頭を下げる天龍。
提督に向けて何かを言ったわけではないのだが、自らを最強だと神通と取っ組み合い、怯えさせたのは事実だ。
「だが、叢雲の肉体は認めてたんだろ?立派なことじゃねぇか」
「あ、ありがとう……ございます」
慣れない敬語でたどたどしく返事をする。
とにかくこの状況がどうなるのか不安で仕方ないといった様子だ。
「ただ、まぁ……」
提督は天龍の両肩を掴んだまま、ぐいっと押し倒す。
トップクラスにデカかったその巨体があえなく床に倒れ込み、太腿や胸がダプンと波打つ。
「メスだってことは理解らせねぇとな」
マウントを取って獰猛な笑みを浮かべる提督。
自分のデカさに自信を持っていた天龍だが、今の彼女には身体のどこを取ってもサイズで負けている。
そして適度に加減されているにもかかわらず、抑えつけられた身体は微動だに出来ない。
圧倒的な力の前に、抗おうという気すら起きない。
「バルクだけじゃなく、こんなデカチチ揺らしてよぉ」
ギュムッ
「あんっ❤」
ゴツく分厚くなった両手で乳房を揉まれ、ハリのある乳房が指の間から溢れだす。
目の前にいる相手が、自分より格上の存在だと……いわゆる「雄」であると、全身が感じ取る。
「これでも最強かァ?」
笑いながら煽られてもなお、圧倒的すぎて抗う気も起きない。
むしろ提督に責められるたび、快感が胸の中に広がっていく。
「提督に勝てる気がしねぇ♥口だけ立派なザコ軽巡に戻っちまう♥」
よがりながら完全に降伏宣言する天龍。
提督は乳房を揉みしだく手を止め、天龍に問いかける。
「で、どうなりたい?」
「……え?」
きょとんとした顔で固まる天龍に向けて、さらに言葉を重ねる。
「自称最強様は、どんな肉体になりたいかって聞いてんだよ」
しばらく迷ったように視線を泳がせる天龍。
筋肉への渇望も、トップクラスの肉体への自信もあった。
しかし……提督を前にしてそれらがすべて捻じ曲げられ、本当になりたいものが変質していく。
そして覚悟を決めたのか、提督を見つめて口を開く。
「オレを……オレを、提督の筋肉奴隷にしてください♥」
「よくできました♥」
自分に素直になったことを確かめた提督は、愉悦の笑みを深めながらのしかかるようにして全身を密着させた。
モコッ、ボコッ……ムチッ!
さらにデカくなっていく天龍の筋肉。
ゴツさとは別種の、艶めかしい丸みが全身に広がっていく。
凄まじいバルクではあるのだが、提督よりは小さく、そして荒々しさや逞しさでも届かない。
マウントを取っている相手こそが雄であると認め、屈服したことを象徴するような……雌としての肉体。
「筋肉はデケェが、雌らしく媚びるエロ肉だなぁ?」
丸みを帯び、目の前の相手に発情していることを示すようにヒクヒクと震えている天龍の身体。
「神通と色々やってたが、私から見りゃあどっちザコ雌だからな」
あいつも後で抱いてやるけどよ、と着け加える提督。
ぞんざいに扱われたことがプライドに障っているはずなのに、雌マゾらしく興奮してしまう。
「似た者同士、仲良くしろよ」
そう言い残して、すっとマウントを解除し立ち上がる提督。
「あっ……」
名残惜しそうな様子で手を伸ばす天龍だが、
振り向きざまに一言。
「一段落ついたら犯してやっから」
「は、はいぃ❤」
腰砕けになって身体をくねらせる天龍。
メス顔で蕩けきったその貌からは、以前のような男勝りな印象は見る影もない。
筋肉の塊のような肉体も、提督の前ではメスらしさを強調するための性器官でしかなかった。
並んでいた艦娘たちから離れる提督。
そして最後に残るは……
「叢雲」
秘書艦の名を呼ぶ。
自分の代わりに、ずっとここを守ってきてくれた最愛の相手。
「ずいぶん待たせちまったな」
「……いいのよ、こうして戻ってきてくれたんだし」
叢雲はいつも通りのぶっきらぼうな口調ではあるが、わずかに頬が赤く、嬉しく思っているのが伝わってくる。
長い付き合いなのだ、そのぐらいのことは分かる。
相対した2つの筋肉巨体。
じっくりと比べてみれば提督の方が1まわりほど大きいものの、ぱっと見はほとんど対等なボリュームをしている。
「褒美をやりたいところだが、まずは私の肉体でヤりたいんじゃねぇか?」
「だっ、誰がアンタなんかと……んっ」
いつものように強がってはいるが、全身についた筋肉の動きは隠しようもない。
目の前の提督、その筋肉に発情してピクピクと震えているのが目に見えていた。
それでも強がろうとするのが分かりきっていたので、キスで唇を塞ぐ提督。
「ずっと禁欲してたんだろ、身体で分かるぜ」
「そりゃあ……秘書艦が気を抜いてたら示しがつかないもの」
自分にも、周りに対してもストイックな彼女のことだ、提督の代わりとして、この筋肉にまみれた鎮守府の代理としてトップでいるため、己の肉体を徹底して鍛え上げてきたのだろう。
どちらともなく抱き合い、全身を密着させる。
「んっ……やっぱデケェな……っ❤」
「当然でしょ、あんたがいない間もずっと鍛錬してたんだから……あんっ❤」
汗がヌチュリと音を立てながら、2つの巨体が絡み合う。
肌のすぐ下にある筋肉が、お互いの肉体を感じて興奮で身体が滾っていく。
相手の筋肉そのものがオカズであり、自らの筋肉が性感帯だった。
ギュムッ、メキッ、ググッ……ボゴゴッ!
抱き合いながら肥大化していく2人。
その肉体は、他の艦娘たちには到底たどり着けない領域へと達していく。
「んっ、ちょっと、流石にやばっ……ひゃっ❤」
「こっちも感じちまって……んぐっ❤」
性欲も凄まじく増大したのだろう。股間に手を伸ばし、グチュグチュと弄りながら甘い吐息を漏らす叢雲。
提督も乳房を押し付けながら、大胸筋が歓喜にビクビクと震えている。
全身の筋肉がうねり、それが加速してゆき──
「ひっ、イクっ❤イっちゃうぅぅっ❤」
「おっ❤んおおっ❤おほぉっ❤」
ボゴオォォッ!!!
興奮と筋肉への刺激のままに絶頂する2人。
抱き合ったまま全身の筋肉が収縮し、巨大な山脈が脈動しているようだ。
そして極めつけに筋肉が爆発するように肥大化し、汗ばんだ肌と熱気を感じながらお互いに見つめ合う。
「あんたも私も……すごいデカさね」
2つの肉体を見下ろしながら呟く叢雲。
腕を曲げるだけでも二の腕と前腕の筋肉がギュムギュムとたわみ合う。
発達の限りを尽くした肉体は、手足はもちろん背中や首周りに至るまで、規格外のサイズで干渉し合っている。
「不満か?」
「全然❤」
嬉しそうに返す秘書艦に、提督も笑みをこぼす。
お互い筋肉の虜となった者同士、このデカさと逞しさを活かすことしか頭になかった。
……そろそろ、提督としての業務に就かなければ。
「あとで存分に抱いてやるから、覚悟しとけよ」
「ええ、待ってるわ」
離れ際にキスをして、素直な笑顔を向ける。
筋肉と強さだけを求め、必死に鎮守府を維持していた時間は終わった。
これからずっと、熱くて筋肉とともに提督に仕える、濃密な時間を過ごせるのだ。
叢雲は幸福に満たされながら、提督の後ろ姿を眺めていた。
「さて、と」
机に向かって歩きだす提督。
あまりにも太い両脚、内腿の肉量が干渉し合って自然と半開きのガニ股になっているが、それすらも快感と興奮の材料でしかない。
筋肉の塊で構成された全身、価値観や肉体美についても完全に自分の筋肉基準に染まっており、他のどんな相手をみても貧弱にしか思わないだろう。
そんな究極の肉体をした彼女を、神々しいもののように見つめている艦娘たち。
(いいもんだな)
筋肉に満ちた全身が歓喜している。
病からも解放され、気力も充実して気持ちよくてたまらない。
まだ肉体は変わったばかりだが、この肉体をこれから存分に味わえるのだ。
そして、まだまだ自分もデカくなれるだろう。
所属している艦娘たちの肉体を味わい尽くすのだって、楽しみとしか言いようがない。
興奮と幸せを感じながら、数年ぶりの自らの机に手をつき、口を開く。
「私は、ここの提督として復帰した。今後の指揮はすべて私が執る。いいな?」
部屋にいる艦娘たちから、歓迎と肯定の沈黙が返ってくる。
歓喜と興奮に満ちた熱気を感じながら提督は続ける。
「まずは所属している艦娘たちを全員、私の部下に相応しい、デカく美しい肉体にしてやる」
自分の同僚たちがムキムキになっていく様子を想像したのか、ビクビクと筋肉を震わせる艦娘たち。
「今後はこの鎮守府をもっと筋肉で満たし、力強く造り変えていく。お前ら、ついてこいよ!」
高らかに宣言した提督。
興奮でパンプアップしていたその筋肉が、さらに一回り肥大した。
(了)