コミッションss 私の鎮守府(3)ボディビル大会
🕑 Added 2023-10-20 09:07:11 +0000 UTC
約10000字。筋肉づくしです。
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食堂を出て、初月を先頭に廊下を進んでいく3人。
提督の後ろを天霧が歩いていて、足音や気配をやけに感じてしまう。
案内されるままどんどん部屋を通り過ぎて、本館たる廊下の端までやってきた。
もう、ここから行ける場所は限られている。
「え……?」
提督の記憶が正しければ、この先にはホールがあったはずだ。
ただ、部隊ごとに出撃や遠征を繰り返す鎮守府において、あまり多用される施設ではない。
季節ごとのイベントや式典のような特別なときにしか使った記憶もないし、平時の日中など無人なことが当然の場所である。
「あー、そういや丁度いいタイミングだな」
納得したような声をあげる天霧。
この奥で何かが行われているかのような口ぶりで、思わず振り向いてその顔を見上げる提督。
「こっちだよ」
しかし何か話す間もなく初月に手招きで促され、ホールの扉の前までやってきた
わずかに漏れる音からも、この向こうで何かが行われていることは明らかだ。
ギィ……
中の邪魔にならないように、大きな扉を人一人が通れる分だけ開ける。
ざわめきが一気に大きくなり、隙間から熱気が顔面に押し寄せた。
「うっ……」
あまりいい予感はしなかったが、意を決して中へと踏み入る。
ホールは大まかにいえば学校の体育館のような構造で、内部はカーテンが閉め切られていて薄暗く、しかし人の気配が充満している。
そして一番奥にある壇上……ステージだけが、唯一まばゆくライトアップされていた。
式典では、艦娘たちに向けて緊張しながらスピーチをしたこともある場所だ。
ステージ上の奥の壁には大きく目立つ文字の看板が掛けられ、今ここで何が行われているのか記されていた。
『第38回 鎮守府ボディビル大会』
「は……?」
「ここなら提督も落ち着けるだろう?」
「いいな、久しぶりに眺めていくか」
空いた席に座る初月たち。間を挟まれるようにして提督も促されるまま座る。
聞きたいことは色々あったが会場に観客たちのボルテージは上がっており、ざわめきに負けじと声を張り上げるつもりにはなれなかった。
(これが、健全な所……?)
確かに、己の肉体美を競い合う……ある種の競技ともいえるだろう。
しかしそのメインは己の肉体美を見せつける、鑑賞するという行為そのものであり、言うまでもなく筋肉に影響を受けた結果だ。
自分のことを心配してくれたのは嬉しいが、そのずれた価値観には形容のし難い複雑な感情を抱く他なかった。
「ちょうど比較審査だね、優勝争いも佳境かな」
初月がステージを見つめながら呟く。
後で補足するように説明してくれたが、1人ずつポーズを取るのではなく、一斉に同じポージングをして選手たちの肉体を比較するらしい。
「さぁ、これから比較審査が始まります。誰が優勝を手にするのか!」
ステージの端に姿を現した司会だろう艦娘がマイクを持ち、スピーカーごしにボリュームアップした声をあげる。
茶髪にくわえて細めでロングなポニーテールにまとめた髪型、そしてテンションの高い声。
間違いなく、陽炎型駆逐艦の秋雲だ。
遠目だからはっきりとしないが、その肉体はやはり服ごしに分かるほどに筋肉がボコボコと盛り上がっており、初月や天霧以上に大きいようにも見える。
くわえて胸も窮屈そうな膨らみが詰まっていて、ゆったりとしていたはずの胸回りの制服がギッチギチの乳袋と化していた。
「準備はよろしいですかぁ~?」
『ワアアアアアッ!!!』
秋雲の煽りに応じて盛り上がる観客たち。ホールを満たす熱気を生んでいる彼女たちもまた、ここの艦娘であることはすぐに分かった。
暗がりではっきりとは見えないが、巨大な影がうごめいているような……。
いろいろ気になることはあるが、今はもう考えている余裕などまったくない。
まず、このステージで何が行われているのか、見届けることが提督として最優先の仕事だろう。そう割り切って意識を前方に集中させる。
「それでは……選手、入場です!」
高らかな宣言とともに、主役を見せるためだろう、ステージを降りる秋雲。
「まず1人目は……武蔵ーっ!」
選手紹介のアナウンスとともに現れたのは、大和型戦艦、2番艦の武蔵だ。
マイクロビキニを身に着け、堂々と胸を張ってステージの上手から歩いてくる。
普段からまともな服を着ておらず胸や腹部にサラシを巻いている彼女だが、それ以上に激しい露出をしていた。
ただ分厚い筋肉が鎧のように肉体を覆っているため、裸に近い格好であることを忘れそうになる。
元から褐色肌だが今はオイルを塗っているようで、ステージの光を反射してテラテラと光沢を放っている。
(大きい……)
筋肉にまみれたこの鎮守府で、この大会に参加するだけの自信があるのだろう。
ステージという広大な空間に1人でいてもなお、会場中の視線を集める足る肉体をしていた。
遠目に見てもデカい、今までに見てきた明石やスキャンプたちに匹敵するだろう。
相当な巨体……なのだが、今まで出会ってきた艦娘たちのような、以前の面影をすべて塗り変えてしまうような筋肉……という印象はなかった。
(でもなんか、武蔵らしいというか……)
彼女は大和型戦艦として元からかなり大柄な体格であり、くわえて雄々しく豪快な性格でもあった。
筋肉を誇るように胸を張り堂々と張って歩く様子も、今までの艦娘たちの中では一番自然にみえた。
元のイメージがガタイが良く猛々しい武人という印象のため、むしろ似合ってすらいるように思えてくる。
(感覚が麻痺してきちゃったかな)
自嘲気味に笑みを浮かべる提督。
実際は、武蔵の肉体も普通の女性ではあり得ないレベルの筋肉量なのだ。
それでもショックを受けなくなっているあたり、この空間に慣れつつあるのかもしれない。
『ウオオオオオオッ!!!』
主役である選手の登場に、太い声で湧き上がる観客たち。
後ろ姿だけで分厚い背筋や肩が見えているが、それぞれ誰かは考えないようにする。
のしのしと大股で武蔵が位置に着く。
「次の選手は……長門ー!」
次に現れたのは、戦艦、長門だ。
連合艦隊の旗艦を務めたこともある彼女には、大規模な海域攻略の際にはよく世話になっていたものだ。
見慣れた顔へと期待を抱きつつステージの上手を見つめていたのだが、出てきたその姿を見て提督は言葉を失った。
「うそ……」
大抵の戦艦において、大和型の方が大きい……それは一般人でも知っているような常識だ。
しかし、その肉体は武蔵よりもはるかに巨大なものとなっていた。
筋肉によって形成されたその巨体は、間違いなく明石や間宮たちのボリュームを上回ってすらいた。
歩いているだけなのに全身の筋肉が浮き上がり、それぞれが歩くためにギチギチとうごめいているのが遠目にもはっきりと見える。
「貴重なオフをこの大会のために消費しての参戦とのことです!」
元々が自他ともに厳しくストイックな性格なのもあって、絞り込んできたのだろう。
余計な脂肪が存在していないその全身は、筋肉の上に肌が密着しているようだ。
「すっげーバスキュラリティだよな」
「バスキュ……?」
「あぁ、血管の浮き上がり具合のことさ」
感心したように天霧が呟く。どうやら体脂肪の低さや絞り込みの程度を示す言葉らしい。
当たり前のように使われている用語に、別の星に来てしまったかのような感覚を覚える。
「お次は……龍驤~!」
そして、次に姿を現したのは、軽空母の龍驤である。
着任してすぐに建造に成功した艦娘であり、とても小柄ながら制空が必要という中で当時はとてもお世話になった存在だ。
懐かしい名前に一瞬だけ嬉しさがこみ上げたものの、すぐに思考がフリーズした。
「え?」
姿を見た瞬間、別人かと思ってしまった。
まず目に飛び込んできたのは、大胸筋によって限界まで張り出した胸。
ビキニを限界まで押し上げ、一歩ごとにビクビクと揺れている。
筋肉で構成されつつも丸みを帯び、男の胸板のような下向きの乳首にはなっていないあたりが、彼女の性別を象徴していた。
それと、特筆すべきものがもう一つ。
(褐色……)
武蔵はもちろん元から褐色肌だし、長門も色素の濃い肌だったため少し焼けたくらいに思っていた。
しかし龍驤は普通の白い肌をしていたにもかかわらず、ミルクチョコレートのような濃厚な褐色となっていた。
「ボディビルだからね、筋肉を見せるために焼いてるのさ」
「ステージの光に負けない濃い色で、筋肉の凹凸をはっきり見せなきゃだからな」
そもそも、光の強さなど関係ないくらいにボコボコと全身が盛り上がっている……のだが、そこは言わないでおく。
「選手じゃなくても褐色にしてる奴も多いぜ」
褐色の方が筋肉を強調できるからだということは、説明されなくても理解できた。
普段からボディビル同然に、肉体を見せつけようとしている……やはり、鎮守府の内部の価値観や風紀は筋肉によって歪んでいるらしい。
「最後の選手は……木曾ー!」
その後を歩いてきたのは、ほぼ同時期に鎮守府に来た木曾だ。
軽巡であり、少女らしい体躯と強気な性格や口調が特徴の彼女だが、やはりというべきか、その面影は微塵もなかった。
ブルッ、ダプンッ!
デカい。とにかくデカい。その一言に尽きる。
特にその胸は大胸筋というよりも、乳房と表現するべき膨らみが一歩ごとに揺れている。
全身に詰め込まれた圧倒的なバルクと、その上に乗った女性としての脂肪。
柔肉の印象も含めてだが、サイズだけなら今まで会ってきた艦娘たちの中でも一番デカいだろう。
他の選手たちとは系列が違うような肉体。
どちらかといえば、少し前に目にした体型のような……
「木曾さん、前よりもいろいろ大きくなってない?」
「間宮アイス予約してたらしいぜ」
さきほどの間宮食堂にて、アイスを食べた朝霜や高雄を思い出す。
確かに、胸の膨らみや脂肪の付き方は彼女たちに代表される特徴だ。
むっちりとした肉が乗った高雄たちと比べるといくらか絞り込まれたように見えるのは、本人がこの大会に向けて調整してきたのかもしれない。
(……もしかして)
提督はステージ上の選手を見比べ、そして今まで会ってきた艦娘たちの肉体を思い返し、あることに気づく。
試作のバケツをかぶったスキャンプを除けば、その大体の筋肉の大小に心当たりがあった。
(着任順で、大きくなってる……?)
提督からみて、着任が早い者……つまり長くこの鎮守府で過ごしている者ほど、筋肉や肉体が大きくなっているのだ。
筋肥大の要員が修復材であるなら、練度や使用頻度は初期艦に近いほど多くなる。必然的に筋肉が発達する頻度も増すのだろう。
もちろん、個人ごとの差もあるのだろうが。
「さあ、選手が出そろいました。この中で優勝を掴むのは誰なのか!」
秋雲が会場のボルテージをさらに上げていく。これからポージングが始まるのだ。
ステージから遠目に見ているがゆえに、自然と彼女たちの肉体を比較して見入ってしまう。
選手たちは適度に左右の距離をとり、足を肩幅に開き両腕を半開きにして、準備は万端だとばかりに胸を張る。
「リラックスポーズだな」
天霧の呟き。
審査はすでに始まっており、隣に並ぶ選手たちより大きく魅力的に見せなければならない。
これ自体が、もう筋肉を見せつけるためのポージングなのだ。
あまりの太腿の太さに内腿がぶつかり合い、ガニ股気味に膝が曲がっている。
「ダブルバイセップス!」
秋雲からポージングの指示が飛び、それに合わせて動き出す4人。
軽く足を開きながら両腕を曲げ、筋肉を収縮させる。
いわゆるマッチョが取る中で、最も代表的なポーズ。
当たり前のように両脇から背中の筋肉が張り出し、太腿のボリュームもあわせて砂時計のようなプロポーションを描いている。
「ラットスプレッド!」
アナウンスとともにポーズを解き、次のポージングへと切り替えていく。
腕を下げて腰に拳をあてながら、胸を張るように上半身を強調する。
そして分厚くデカい胸板の後ろから、さらに左右に広がってはみ出た背中の筋肉を見せつける。
力んでいるからだろう、こわばったような笑顔を浮かべている選手たち。
「サイドチェスト!」
半身になりながら両腕を胸の下で組み、軽く上半身を捻ってステージの方向を向く。
そして二の腕、そして大胸筋の厚みを見せつける。
サイドチェスト……ダブルバイセップスに次いで有名だろうポーズ。
「ふんぬぅ!」
龍驤の気迫が最も感じられるのは、やはり胸についてアピールする種目だからだろう。
筋肉のみで構成されているはずのその胸が、二の腕を覆い隠さんばかりにせり出した大胸筋によって、まるで乳房のように丸く分厚くせり出している。
普通の大和の胸を上回るだろうボリュームでありながら、その谷間はゴツゴツとしており巨岩が並んだよう。
木曾については組んだ両腕の中でどっぷりとたわみつつ、その付け根は大胸筋であることを示すようにボコリと固そうな形に歪んでいた。
「木曾、デカいよ~!」
「長門さん、絞り込みサイコー!」
観客からの掛け声にも力がこもる。
それぞれ、推している選手がいるのだろう。
ボルテージはどんどんと上がってゆき、会場の熱気も湿度もいっそう増した気がする。
「バックラットスプレッド!」
今度はバックと名の付く通り、背中側を見せるポージングらしく、後ろを向きだす選手たち。
少し準備が必要だからか、腕を揺らしたり足の位置を調整する。
やはり絞り込まれた長門と龍驤の背中は鬼気迫るもので、筋肉がうねるように波打ち、腕の動きに合わせてギチギチとひしめいている。
広がりすぎた広背筋が、二の腕とたわみ合っているのが一目でわかる。
「ふんっ!」
ボコォッ!
ただでさえ巨大な背中を、さらに大きく強調しながらのポージング。
翼を広げるように左右に広がり、まるで分厚い甲羅を背負っているかのような状態になる。
ひとしきりポージングを繰り返した後に前面に戻り、クライマックス。
「モストマスキュラ―!」
「うおおおおおっ!」
「ふんぬぅっ!」
前かがみになりながら両腕を胸の前で曲げ、全身に力を込める。
両サイドから僧帽筋がせり出して、後頭部ごしに背中がボコリと盛り上がり、顔の下では大胸筋と二の腕がぶつかりそうなほどに盛り上がる。
まるで、筋肉の塊に顔がついているようだ。
「んぐおおっ!」
「うがぁぁぁっ!」
武蔵は鬼の形相を浮かべ、
長門は血管と筋をバキバキに浮き上がらせ、
龍驤は大胸筋と両腕がギチギチとたわみ合い、
木曾は乳房と肉量で見る者を圧倒している。
それぞれの個性を発揮しつつ、すさまじい気迫。
距離があるにもかかわらず、目を離すこともままならない。
「やっぱ古参の艦はやっぱでけぇな~」
「僕らも早く追いつきたいね」
うっとりと見惚れるようにステージを見つめている天霧と初月。
提督も、ただその肉体を眺めることしかできなかった。
ステージを見つめているうちに、自然と4人の身体を見比べる。
素人目にその優劣は分かっていなかったが、それでも会場の盛り上がりや雰囲気で何となくながらも順位が付けられていくのを感じる。
(やっぱり目立つのは……)
特筆してデカいのは龍驤と木曾だった。
しかしボディビルという種目においては、皮下脂肪が薄い方が有利となる。
どれだけバルクがあっても、コンディションが悪いという理由で下位に落とされうる。
両者は似たようなサイズ感ながらも、そこが違っていた。
ポージングをするたびに筋肉の凹凸が陰影となって現れるのだが、龍驤の方が倍くらいに濃い陰にみえる。
みな褐色肌で統一されているのも、それぞれを対比する上で意味があるのだろう。
もちろん木曾も全身の皮下脂肪を押し上げるだけのバルクは十分すぎるほどあるのだが、同じような体格で凄まじい絞り込みの龍驤がすぐ隣にいるため、その甘さが際立ってしまっていた。
どの艦娘の身体もすさまじい巨体に間違いはないものの、誰が一番だったかについては共通した見解が生まれていた。
「優勝はぁ……龍驤選手ー!」
「っしゃーっ!」
審査が終わり、結果が告げられる。
優勝者が発表された瞬間、歓喜の雄叫びとともに胸の前でガッツポーズを取る龍驤。
ポージングを繰り返したパンプアップした肉体は、まるで筋肉の塊がうごめいているようだ。
「応援ありがとなー!」
歓声に応えるように腕を降っているが、二の腕の筋肉がブルンブルンと揺れまくる。
メダルを首にかけ、満面の笑みでステージを去っていく。
「以上をもちまして、ボディビル大会を終了します」
大会のアナウンスを終えた秋雲。
会場を盛り上げ続けた功労者に向けて、観客が盛大な拍手を送る。
彼女はそれに応じるように、ニヤリと笑みを浮かべた。
「いや~、みんなすごい筋肉で、秋雲さんも次は参加したくなっちゃったなぁ~♥」
アナウンスの時とは少し違う、素の秋雲としての口調で語りだす。
彼女もステージ上の筋肉の祭典を眺めて興奮していたのだろう。最初よりも2まわりほど大きくなった全身の筋肉によって、服が破けかかっている。
「だからぁ……ふんっ!」
前かがみになって両腕を曲げ、力を込めはじめる秋雲。
さきほどステージで見たばかりだから提督でもわかる、モストマスキュラ―のポーズ。
全身の筋肉を収縮させ、見せつけるのに丁度いい姿勢だ。
「ウオオォォォ!」
元から音圧のある声だったが、さらに太く低い気合いがスピーカーから響く。
全身が震えるような大音量に、思わず耳をふさぐ提督。
今まで溜め込んでいたエネルギーを爆発させるように、全身が内側から膨れ上がる。
バルクを象徴するように、山脈のごとき筋肉の連なりが輪郭となって現れる。
急激に増した内圧に、すでにギリギリだった服が耐えきれるはずもなく──
ビリッ……バリバリィッ!
あえなく内側から千切れ飛んだ。
最初から着込んでいたのだろうマイクロビキニ1枚になり、会場から歓声があがる。
「次の大会までにもっとデカくなっておくから、楽しみにしててね~!」
そしてポージングを見せつけながら、大会への参加を表明した。
今でも相当なサイズだが、とんでもない肉体の選手たちに比べると、少し見劣りするだろうか。
しかし、もっとデカくなってステージに登場する……その言葉通り、様変わりしたデカさと絞り込みをもってステージに現れることは間違いないだろう。
「筋肉に自信のある奴、参加待ってるよ~♪」
最後に出場者募集の呼びかけをしつつ、手を振りながらステージを降りていく。
興奮と熱気が渦巻く中で、ボディビル大会は幕を閉じた。
薄暗くなっていたホールに照明がつき、ぞろぞろと会場から観客たちが出ていく。
提督も立ち上がろうとしたところで、初月に軽く腕を引かれた。
促されたのは出口とは反対……ステージの方向だ。
「久しぶりなんだし、彼女たちに会いに行こうか」
「え、どこへ?」
首をかしげる提督へ、初月が答える。
「選手だったみんなだよ」
ステージ裏はボディビル大会のために設備が大幅に変更されていた。
余計なものが何も置かれていない無骨な大部屋に、筋肉をパンプアップさせるための空間らしくバーベルが置かれている。
壁にはポージングの最終調整ができるための鏡まで用意されていた。
そしてさきほどまで競い合っていた選手たちが、和気あいあいと言葉を交わしながらプロテインを補給していた。
「おめでとう、やはりすごい筋肉だな」
「いやー、ウチでも勝てん相手はいるからなー、もっとデカくならんと」
長門から賛辞の言葉を送られていたのは、優勝者の龍驤だ。
ポージング中の力のこもった顔つきから一転、関西弁の明るい少女らしい表情で応じている。
ステージではずっと筋肉を収縮させ続けていたのだろう、色濃い褐色の肌からは珠のような汗が浮かび、筋肉の谷間を流れ落ちている。
今の彼女たちの筋肉は自然体ゆえに脱力していて丸みを帯び、柔らかそうですらある。
力を抜き、それゆえにビクビクと収縮する筋肉の振動は、むしろポージングのとき以上にリアリティをもって感じられた。
「優勝おめでとう」
恐る恐る近づき、龍驤に声をかける。
こちらを見て少し驚いた表情を浮かべたものの、すぐに嬉しそうな顔に変わる。
「久しぶりやな、元気にしとった……わけやないか。よう帰ってこれたなぁ」
いつものノリで応じ、静養中だったことに自分でツッコむ龍驤。
古参の艦娘であり付き合いはかなり長く、提督も思い出が色々ある。
中には、その胸について触れて関西弁で怒られたことだって……。
「本当に変わったね……その身体……」
元の龍驤といえば軽空母の中でも華奢な体躯が有名で、ともすれば軽巡よりも小柄なレベルだった。
それが、筋肉にまみれた鎮守府のボディビル大会で優勝するにまで至ったのだ。
「どや、立派な乳やろ?」
ニヤリと彼女らしい笑みを浮かべて、大胸筋をビクビクと震わせて見せる龍驤。
筋肉の塊ゆえに、左右交互にブルブルと大きく収縮し、脱力されるたびに自重でブルンッ、と揺れる。
いわゆる雄っぱいをさらに盛りまくり、女性らしい曲線に作り変えたような輪郭。
駆逐艦に近い体型をした彼女だったが、その頃の印象は微塵も感じない。
厳密には、骨格レベルにおいても豊満な体型ではないのだろう。
しかしこれでもかと肥大化した筋肉によって胸と尻がボリュームアップし、相対的にウエストが細くなっている。
体型を形作っている筋肉が異様に発達したことで、女性的ともいえるプロポーションを形成していた。
「こんだけデカくなると、服もなかなか入らへんからなぁ……」
困ったと呟きつつも、うっとりと自分の胸板を触っている龍驤。本来羨んでいたのは女性的な乳房だったはずなのだが、今の彼女にとってはこの筋肉こそが至高の胸なのだろう。
横幅が大きく、長身というよりも筋肉の厚み、デカさの方が強烈なインパクトを持って眼前に迫ってくる。
その上で、天霧たちよりも背の高い巨体なのだ。
提督からすると目線の高さに大胸筋が迫ってくることとなり、汗まじりの熱気を顔面にあびて、思わず息が詰まる。
ただ気分を悪くするようなことはできないと、できるだけ無反応を貫くのがやっとだった。
「前は似た者同士やったけど、キミの方が貧弱になったなぁ」
笑いながら提督の身体を眺める龍驤。
元から細身ではあったが、それでも大人の女性としての体型は維持している。
数年前の龍驤は微妙に同類のような、でも羨ましいような視線を送っていたのだが……。
今となっては、自分の方がずっと起伏のない身体といえるだろう。
「お疲れ、それと優勝おめでとう」
微妙な空気を破るように龍驤のもとへやってきたのは、隣でポージングしていた木曾だ。
彼女は、その圧倒的なサイズで3位。なお、長門の方が絞り込みが評価されて準優勝となったようだ。
「もっと絞り込まんとアカンやろ、そんなウシ乳ぶらさげてもしょうがないわ」
「いやー、間宮アイスを食っちまってさ……んっ」
自分の胸を揉みながら、吐息まじりに語る木曾。
わずかに熱のこもった瞳から、朝霜と愛宕のまぐわい合う光景が脳裏に蘇る。
「胸も筋肉も気持ちいいんだけどよ、ボディビルには向かねえよな……」
アイスの影響か性欲はやはり高められているようで、頬がうっすらと紅潮しているし声のトーンも吐息まじりに熱っぽい。
自らの乳房を揉んでいる手つきもやけにねっとりとしていて、龍驤のように自慢するためや見惚れるために揉んでいるようではなさそうだ。
そもそもボディビル大会を前にして、禁欲していたのだろう。反動が一気に押し寄せてきたようで、どんどん激しく乳肉をこねくり回していく。
「やばっ、止めらんねぇっ……!」
提督に見つめられているのも興奮のスパイスになっていたらしい。
片腕を胸にやったまま、ビキニに包まれた股間の方へも手を突っ込み、グチュグチュと弄りだす。
あまりの行動に反応することもできず、そして木曾の興奮はみるみる高まってゆき──
「はあぁぁぁん❤」
ブシャアァァァッ!
絶頂とともに母乳を噴き出した。
ビキニごしに滲みだし、だくだくと下乳を流れ落ちていく母乳……。
朝霜たちのときにみた光景が繰り返される。
しかしより大きい木曾の肉体、間宮の母乳が十二分に馴染んだその肉体派、それ以上に大量の母乳を溜め込んでいたようで……
ブシュ、ビチャッ!
「うわっ!」
勢いよく迸った母乳が、前に立っていた提督にもいくらかかかってしまう。
「やばっ❤視られてんのも興奮するっ❤母乳止まんねぇ❤❤」
イってもなお性欲は鎮まらず、自慰を止められない木曾。
おっぱいのついたイケメンと評判だった頃の彼女とは似ても似つかない振る舞いに、提督はただ呆然と立ち尽くす。
「見てたら、興奮してきちまったぜ……」
「僕たちも鍛えてくなってきたね」
彼女たちの様子をじっと見つめていた、初月たちの声にも熱がこもっていく。
興奮しているのだろう、頬を紅潮させ、蕩けるようにうっとりとした視線を木曾や龍驤へ送っている。
ピクピクと筋肉が小刻みに震えているのが服の上からもわかる。
もしかすると、ステージ上で筋肉を見続けていたのも影響していたのかもしれない。
ガシッ
「え……あ、ちょっと……」
おもむろに太い腕を伸ばし、提督の両腕が左右から抱きかかえられる。
反射的に身をよじろうとしたが、がっしりと拘束された腕は分厚い筋肉に阻まれて微動だにしない。
「もう調子も戻ってきただろ、」
「今度は僕たちの行きたいところに案内させてもらうよ」
提督を連れてその場を離れていく天霧と初月。
彼女が抵抗できるはずもなく、引きずられるようにしてホールを後にした。